2013年6月29日土曜日

自民党・平井たくやネットメディア局長の「黙れ、ばばあ」に"ネット選挙"時代の開幕を感じる

ネット上で投票まで可能になる本当の「ネット選挙」からはいまだはるかに遠い状況だが、現行だけでもかなり面白いじゃないか。この「いわゆるネット選挙」ってやつ。

東京新聞:自民・平井氏ネット党首討論に投稿 福島氏に「黙れ、ばばあ」:政治(TOKYO Web)

(一部引用)中継会場で討論を聞いていた平井氏は、社民党の福島瑞穂党首が冒頭発言した際に「黙れ、ばばあ!」、日本維新の会の橋下徹共同代表の欠席が伝えられた際には「橋下、逃亡か?」などとスマートフォンで書き込んだ。一方、安倍晋三首相の発言に対しては「あべぴょん、がんばれ」など肯定的なメッセージを送っていた。

いやあ、さすが次の参院選でも圧倒的勝利をおさめようとしている政権与党の「ネットメディア局長」。日本のインターネッツを素晴らしく理解しておられる。 疑問があるとすれば、なぜこれが漏れるのかという点くらいだ。


こういった主張に賛同する人はたくさんいるだろうから、そういった方々にとっては平井氏ならびにFacebookで独自のワールドを展開中の総裁のように、自民党に票を投じる理由を高めることになろう。なにせ他の政治家は歯に衣着せた発言をくり返すわけなので。

たしかに私にとっては今後、彼に投票する敷居は相応に上がったわけだが、こうやって政治家の"本来の"人となりがもっと見えやすくなったわけである。彼の行動は有権者にとってありがたいネット選挙活動となったわけだ(彼は衆院議員だけれども)。


しかしながら、こういったことも気軽に言ってられなくなったのかもしれない。 そうした思いに駆られるのは、皆さんご存知の「炎上死」事件があったからだ。

岩手県議:小泉氏死亡、自殺か 病院非難でブログ炎上- 毎日jp(毎日新聞)

(一部引用)県警二戸署によると、既に死亡しており、自殺の可能性が高いとみている。小泉県議は、自身のブログが「炎上」したばかりで、同署が関連を調べている。

 小泉県議は5日に更新したブログで、盛岡市の県立中央病院を受診した際に番号で呼ばれたことに腹を立て、「刑務所に来たんじゃない」「会計をすっぽかして帰ったものの、まだ腹の虫が収まりません」などと書き込んだ。非難が殺到してブログを閉鎖。17日に記者会見し「公人の立場を忘れ、思慮に欠けた不適切な表現を公開した」と謝罪した。県議会と県には21日までに苦情や議員辞職を求めるメールと電話が計762件寄せられた。

この一件も私は当初、先ほどの論点を適用し、小泉県議は有権者の判断に資するブログを書いていると肯定的な評価を行なっていた。
私が青森県民であれば、誤った判断をする可能性をそれだけ減じてくれる素晴らしいエントリだった。(もちろん、書いている内容そのものには反吐が出るほどであった。)

しかしながら、ネットに政治が歩み寄ってきたということは、インターネットが非ネット圏の人間に相対的に近づいてきたことを意味する。

だって見てみろ、きょうの読売1面に「ニコニコ動画」の文字が踊っているじゃないか。ちょっと前まで「インターネット上で」だとか「動画投稿サイト」などとぼやかされていた、元はといえばYouTubeの上にコメント流していた存在が、全国紙の1面に写真で載っかってるんだってば。

ネット炎上で岩手県議が自殺との報に触れて:クロサカタツヤの情報通信インサイト - CNET Japan

(一部引用)しかし、ネットにおける議論の影響力が、ネットの外部にも伝搬していく時代においては、もはや社会全体の課題であり、ネットも否応なくその一部として俎上に載せられるということです。

残念ですが、牧歌的な時代は、もはや過ぎ去ったようです。今後は、ネットにおける自由な議論の限界を、社会制度も含めて批判的に検討せざるを得ない状況なのでしょう。

というわけで、冒頭の私の論理は外界見ずの文字通り「牧歌的な」感覚となってきているということになるのでしょう。

これは、隠すことよりも見せることの方が世間に評価されて欲しいと願う私にとっては非常に苦しい事態ですが、過渡期には過渡期らしい生きづらさがあるものです。


こうした時代だからこそ、平井たくや衆院議員、いや、ネットメディア局長の今後の立ち振舞いに期待せざるを得ません。

2013年6月12日水曜日

「資本金999万円」

とある知人が電気工事関係の会社を立ち上げました。

規模は小さく、業界的には取引先候補もやはり「一見さんお断り」となりやすい環境らしいのですが、親(同業)のサポートもあり決心されたとのことです。
まだまだ若いこともあり、明日ちょっと応援名目でお茶を飲みにいく予定です。

さて、急になんでこんな話をし始めたかといいますと、こんなニュースを見たからです。

消費税2800万円脱税容疑で告発、理容店社長を東京国税局  :日本経済新聞

 関係者によると、同社は、資本金1000万円未満の法人を設立した場合、年間売上高が1000万円を超えなければ消費税納税を2年間免除していた制度を悪用。経営する理容店の営業権を、実体のない複数の新設法人に譲渡したように装い、消費税約2800万円の納付を免れた疑いが持たれている。(一部抜粋して引用)
法人が消費税を納めなければならないかどうかを判定するにあたっては、その前々期の業績が一定以上であるかで決まります。
もう少し具体的には、2期前の(課税)売上高が1,000万円を超えているかどうかといった具合です。

しかし、新たに設立した法人にはこの「前々期」が存在しないことから消費税を納める義務がないこととなります。(なお、記事にもあります通り、このルールについては平成23年の改正からもう少し厳格な取り扱いとなっています。)

記事に登場する理容店はこのルールを悪用し、2年ごとにダミー会社を次々と作ってそれぞれに営業権を譲渡することで消費税の免税事業者を装っていたとのことです。


これが冒頭の話と何の関係があるのかということなんですが、実は私の知人は先ほどの「業界的に一定の信用力がないと厳しい」に対応するため、資本金の額を1,000万円として起業したのです。(詳しい方、見落とさなかったはもう気づきましたね。。)

そう、理容店が悪用した「前々期(基準期間)ルール」については、記事中でも「資本金1000万円未満の法人を設立した場合、年間売上高が1000万円を超えなければ消費税納税を2年間免除していた制度」と紹介されていましたね。
No.6503 基準期間がない法人の納税義務の特例|消費税|国税庁

(前略)したがって、新たに設立された法人については基準期間が存在しないため、設立1期目及び2期目は原則として免税事業者となります。
 しかし、その事業年度の基準期間がない法人のうち、その事業年度開始の日における資本金の額又は出資の金額が1千万円以上である法人については、その基準期間がない事業年度における課税資産の譲渡等について納税義務を免除しないこととする特例が設けられています。(後略)

というわけで、晴れて知人が経営する法人は1期目から消費税の納税義務者となってしまわれたわけでした。

当人は「うわー、999万円にしといても良かったね」とも言っていましたが、設立しちゃった以上はもう仕方ないので、明日は簡易課税制度についてちょっとだけ紹介してあげようかなと思っています。


また、これは別の知り合いですが、彼(代表)は先日1,000万円を超す資本金を計上していた法人で「減資を行った(ざっくり言うと資本金を減らした)」そうです。

「減資」といっても、どうやら資本金を減額した分の負債を立てただけのようですが、そうした背景には法人住民税の「均等割」というものがあります。

※画像のリンク先は東京都主税局のページ

これは売上や利益に関係なく、法人の「資本金等」の額が大きいだけで法人住民税が多く課されるという頭痛のタネです。

儲かっていなくても、ただ資本金が1,000万円超(こちらは「以上」ではないみたいです)あるというだけで10万円近く税金が変わるのですから、その気持ちも痛いほど分かるというものです。
ただ、こうしたことを行う際には、くれぐれも会社のステークホルダーの方々には誠意を持ってお伝え下さいね。


今日書いたことは、ざっくりイメージとしては「資産運用NEWS:vol.52 資本金の壁|みどり財産コンサルタンツ」などで掴めるかと思いますが、地域によっても、会社設立の時期によってもルールが変わってしまうため、詳しくはお近くの税理士さんにご相談ください。

以上、今回は会社の信用力と資本金等の額にまつわる悩ましい話題でした。